保護猫カフェ たまゆら 店長・今場奈々子さん|人形町

勾玉(まがたま)が触れ合うかすかな音を、「玉響(たまゆら)」というそうです。今回訪れたのは、江戸文化に根ざす人形町。2017年秋、猫と人がひと時出会いふれあう「保護猫カフェ たまゆら」がオープンしました。開店から1年を経た店長の今場奈々子さんと、ともに立ち上げから携わるスタッフの戸田さんにお話を伺います。かすかな響きに耳を澄ませて。

響きはじめのタイミング

ー出会いは今から5年ほど前。今場さんがボランティアをしていた保護猫カフェに正社員として戸田さんがやってきました。月日が流れ、二人が合流するタイミングが巡ってきます。

今場:長年勤めていた漢方薬局の仕事を辞めて、そろそろ自分で保護猫カフェをやろうかなと思っていました。ちょうど戸田さんから「仕事をやめようと思っている」と聞き、「一緒にやりません?」と声をかけたんです。

そういえば、と数年前に一度気になった物件を思い出して問い合わせたら、ちょうど数日前に貸し出されていて。「見に行きません?」戸田さんを誘って見に行きました。

で、見に行ってしばし考えて……。「やろっか?」みたいな感じでした。それがこの物件だったんです。

数年ごしで再会した物件。特に陽当たりのよさが気に入った。下が動物病院だということも知っていたけれど「猫専門の病院とまでは知りませんでした」(今場)

3ヶ月、気づいたらできていた

―物件を決めてから開店まで3ヶ月。必要なピースが自ずとそろっていきます。

今場:物件を見にいった翌9月、お店の名前を決めようということになり二人でファミレスに行きました。3時間ほどあれこれ考えた後、ネットで出会ったのが“たまゆら”という言葉です。

勾玉がふれあい響きあうかすかな音を表す古語、転じて“ほんの少しの間”という意味があると知り、保護猫がずっとのお家へ旅立つ前のひと時を過ごす場所、猫とお客様がひと時ふれあう場所、にふさわしいと思いました。

店名が決まると、すぐにロゴの原型が浮かんだ。太極図を模した形。「ここが肉球で……」二人の合作で一気にコンセプトが固まった。

今場:父の友人にデザイナーさんがいて、ロゴの原案を成形してくださいました。それと、物件を決めた頃から、何かの役にたつだろうと動物病院でアルバイトを始めていたのですが、そこの先生が内装業者さんを紹介してくださって。

必要なことを進めてくださる方が自分たちの周りにそろっていて、正直、気がついたらお店ができちゃった感じなんです(笑)。

「両親も最初は反対していたのですが、気づいたら協力をしてくれていました。弟だけは今も“採算はどうするの? 見通しは立ってるの?”としつこく聞いてきますが、本当に困った時は力を借してもらう秘密の約束をしています(笑)」(今場)

各々の好きから響き出る、たまゆらの音色

ー保護猫をきっかけに出会い、貴重なミッションを協働で立ち上げた今場さんと戸田さん。猫ヨガやマルシェなど、たまゆらでは様々なイベントが開催されていますが、「ジャンルの違う二人で、できることが見事に違う」(今場)のがよかったのだそうです。

戸田:もともと漫画家を目指していて、一区切りをつけて猫カフェで働くようになりました。自分でいつかお店を持ちたいと思い、研究を兼ねて始めたのが猫カフェ巡りでした。やがて保護猫や保護猫カフェの存在を知り、ボランティアとして関わる中でとても素敵な方達との出会いに恵まれたんです。

ここの猫たちをお預かりしているリトルキャッツの代表さん、定期的に猫ヨガをやってくださる池迫美香先生、たまゆらマルシェに参加してくださる猫好きなモノづくり作家さんたち。“この方たちにぜひ!”、という私たちの大好きなみなさんがたまゆらに関わってくれています。

「作家さんたちが、丹精込めて生み出した作品を、マルシェの後、お店に置いて全額寄付でいいよといってくださったのがとてもうれしかった。自分もモノづくりをしていて出会ったみなさんと、こんな風につながれるとは思ってもいませんでした。がんばらないと、と思います」(戸田)

実は……。まあ?! どうぞどうぞ!

ーそんな「たまゆら」からずっとのお家へ巣立っていった子たちはこの1年間で16匹を数えます。

今場:何度も通ってくれて、ある時に“実は……”と里親を申し出てくださるケースがほとんどなんです。“まあ?! どうぞどうぞ”と言ってしまうような、この人にぜひお任せしたい、というご縁がほとんどでした。

猫と暮らして里親さんがお店にいらしてくださって、幸せそうに報告をしてくれるんですね。それがすごくうれしかったです。うれしさの頂点が、決まったところで終わりじゃなく、その先にもあるんだと知りました。猫だけじゃなく、人のことも幸せにするんだなって。

辛い別れもあった。多頭崩壊出身のよつば(写真の黒猫さん。一周年記念に、たくさんの方に愛されたよつばのノベルティを作った)は生後1年未満で急性腎不全を発症し急逝。FIPを発症したパーシヴァルは、里親さんのお宅で2週間おうちの子になり、星になった。「一人だったら耐えきれません。でも共有できる人がいて、お客さんも含めてたくさん話ができて。猫たちを一緒に見られる幸せを感じます」(戸田)
2019年からは御蔵島の「SAVE THE ONAGIDORI PROJECT」の猫たちがたまゆらにやって来る予定。

その時、助けることができるように

ーさまざまな立場の人たちの共感と響きあい最初の1年を乗り越えてきたたまゆら。喜びも悲しみも、自分たちごととして経た今だからこそ大切にしたい想いがあります。

今場:私たちはここまでの1年間、たくさんの方に助けてもらい、順調にたまゆらを続けることができました。他の保護猫カフェのみなさんからも助けられています。

これからも人に助けられていることへの感謝を忘れずに、常に、少し先を見続けていきたいです。あまり遠すぎると目の前のことがわからなくなるし、今だけを見ていると何かが起きた時にワタワタしてしまうと思うから。

その時、“助けてあげられなかった”と後悔しないよう、自分たちに何ができるのかをずっと、考えていかなきゃと思うんです。

「急な出張に備えたペットホテルやペットシッター、長毛の里子たちのためのシャンプーサービスなど、今よりも猫を迎えやすくなるよう、里親さんへのアフターサービスを計画中です」(今場)
「猫に対してがんばりすぎず、お互い休みもきちんと取りながら、体も心も健康に長く続けましょう」(戸田)

MESSAGE〜できること何でもつなげて

たまゆら今場さんから、保護猫のために力になりたいと思っている人へ

今場:できることはなんでもあります。私もお勤め時代にボランティアをしたり寄付をしてきました。店を始めてからは、お会いしたことのないハンドメイドの作家さんが、チャリティで販売してください、と作品を送付してくださったこともありました。小さなことかもしれませんが、RTすることも助けにつながるんですよ。“できる人が、できる時に、できることを”。それぞれができることを保護猫支援につなげていきましょう。

DATA

保護猫カフェ たまゆら|人形町
営業 月〜土曜12:00〜20:00、日曜・祝日12:00〜18:00 ※火曜定休
利用料 40分1,000円(ワンドリンク付)※フリータイムなど曜日ごとにサービスあり。詳しくは公式サイトにて
アクセス 都営地下鉄浅草線・地下鉄日比谷線「人形町」駅 A3出口 徒歩1分、地下鉄半蔵門線「水天宮前」駅 徒歩4分、都営地下鉄新宿線「浜町」駅 徒歩6分、他、「馬喰町」駅、「茅場町」駅も徒歩圏内

caTravan diary|編集後記

1つ1つのご縁を通じて豊かになっていくのは、保護猫だけじゃない。一緒に生きていく人間たちも豊かさを贈られていくんだということ。心地よい陽が差し込むたまゆらで耳をすましたら、猫と人が織りなす豊かな響きが聞こえてきました。大好きなもの、大切にしたいものを核に、多様で美しい響きが生まれ、音色を構成していく。たまゆらが“順調”であることのヒミツは、その辺りにあるような気がしてなりません。(Mya~no)

“できる人が、できるときに、できることを”や”心の健康”など、私たちがモットーとする<身の丈>と共通部分を感じることができて、印象的でした。今場さんが歩んできた道と、戸田さんの歩んできた道。別々の道だったはずなのに交差して、大きな道になっていく。これからふたりが進んでいくのは、どんな道なのか、興味が尽きません。その足音にも、きっと新たな響きを感じることができるのでしょう。(Tomom!)

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