いやし亭 ほご猫茶屋 代表・小野田沙保里さん|新橋

日夜、多くのビジネスパーソンが街を行き交う新橋。ひしめくビルの一角に、2018年3月、保護猫たちと憩いのひと時を過ごせる一軒の茶屋がオープンしました。和レトロをコンセプトにした「いやし亭ほご猫茶屋」、代表の小野田沙保里さんにお話を伺います。

和空間へ導いた祖母の遺品たち

ーテレビの街頭インタビューでおなじみ、新橋駅前のSL広場から歩いて5分ほど。いやし亭は、飲食ビルの6Fにお店を構えています。ビジネス街の保護猫カフェ、駄菓子食べ放題の癒し空間というユニークなコンセプトに興味をひかれずにはいられません。

小野田:ここはもともと古い事務所だったところを、居抜きの形でお店として整えました。2017年の11月11日にオープンすることが決まった時は雑然とした空間で、コンセプトもなにもない状態でした。たまたま、祖母の遺品整理を行っていた時期で、その家具や古道具なんかを置いてみたらおもしろいかも、というのが和テイストの源です。そこから駄菓子食べ放題のサービスも生まれました。

とにかく落ち着く店内。ごろんと寝転べば、すぐに人懐こい猫たちがわらわらと寄って来てくれる。猫と寝落ちするお客さんも少なくないというのもうなづける……zzz

チームいやし亭DIY作戦決行

ー和空間のシンボル的存在が、流木や古材で作られたキャットウォーク&タワーです。

小野田:猫家具職人を目指す方がボランティアで作成してくれました。開店準備の際、ジモティーという地域コミュニティーのニーズを繋ぐサイトで、ボランティアや猫グッズの提供などを呼びかけてみたんです。すると、多様な方が手をあげてくれました。DIYが得意な方、Webが作れる方、それに、ここの猫たちを譲ってくださったベテランの保護猫活動家の方。

小野田:猫もコンセプトも無の状態から、半年弱でオープンできたのには、素材集めや制作作業など、猫愛を共有するチームいやし亭のみなさんの存在なくしては語れません。

「学生時代の部活のような、一致団結した楽しい時間でした。ボランティアのみなさんとは、今もSNSグループなどを通じていい形のコミュニケーションが続いています」(小野田)

飲食業のあたりまえ、を保護猫カフェに

ー開店準備こそ、今風にソーシャルな力が発揮されたいやし亭ですが、その運営母体は全国的に飲食チェーンを展開する会社とのこと。保護猫のテーマとお店経営の“あたりまえ”は、どう融合しているのでしょうか。

小野田:運営母体の会社は、飲食業でありながら社是に「殺処分ゼロ」を掲げています。私の夫の勤務先でもあり、保護猫カフェの話が持ち上がった際、自宅で小さく保護猫活動を始めようとしていた主婦の私に白羽の矢が立ったのでした。

小野田:開店当初こそ、乳飲み子を抱えベビーカーを押してお店に通う一人体制の時期もありましたが、すぐに、アルバイトスタッフを募集し現在の店舗体制を整えました。母体事業の経験や知恵を生かし、一人一人がカフェの接客として、お客様と心地よい会話やコミュニケーションができる、また来店いただけるようなお店作りを目指しています。

場所柄、本棚にはビジネス書が並ぶ*。会議室としての貸切使用もOK。フリーWiFiや電源も自由に取れるので自習利用にもよさそう。ただし、猫たちのかわいさに時間が過ぎるのもあっという間(笑)。今後、金融セミナーや副業紹介などのビジネスイベントも計画中。*書籍は販売しています。

小野田:保護猫カフェだからといって、接客業の“あたりまえ”をナシにやっていけるとは思いません。むしろ、保護猫テーマでもビジネスとして利益を出して持続できることを示したい。そのためにいろいろな人を巻き込みながら、イベントや企画などに挑戦していきたいと思っています。

飲食業を生業とする母体企業の慈善事業的な面もあるいやし亭ですが、収支面や運営改善については厳しいプロの目にさらされているという。「夫からは、まだまだ“カフェ”じゃない、と日々叱咤を受けています」(小野田)

NG条件より、譲渡可能な解決案を考えたい

ー開店から約半年。いやし亭とご自宅の保護猫のうち、2匹を里親さんのもとへ送り出した。ややゆっくりペースの印象ではあるものの、譲渡条件が厳しいわけではありません。

小野田:老若男女、里親さんの明確な条件はありません。強いて言えば、里親詐欺以外ですね。猫を迎えるにあたって年齢や生活環境のことで足りない事情があっても、ケースバイケースで、どうすればそれを補えるかを一緒に考えたいと思います。運営母体の不動産事業と連携して、ペット可の物件を仲介手数料なしでご紹介することも可能です。

「先日里親さんから、“猫が来てから家族の会話が増えて、早く家に帰りたくなりました”というお便りが届きました。朝起きてそばに猫がいる。猫がいる人生は、日々それだけで豊かなものです。カフェとして利益を出しながら保護や譲渡にも力を入れていくことが私たちの一番の理想です」(小野田)

奪い合いより、繋がり合いを目指して

ー当初、チェーン展開を構想したいやし亭ですが、小野田さん自身、研究のため猫カフェを訪問する中で、ある気づきが芽生えたそうです。

小野田:保護猫カフェをめぐる中で、それぞれが保護猫へのいろいろな想いをもって運営されていることを知りました。飲食チェーンであれば多店舗展開はあたりまえのことですが、猫カフェが増えることで、シェアの奪い合いが起き他の保護猫カフェがつぶれてしまうようなことはしたくありません。それより、自分たちでシェルターを1つ併設する方が、よほど譲渡も増やせるでしょう。

小野田:日々、SNSなどで、どこどこの保護猫カフェで譲渡が決まった、という吉報を見ると、不幸な子が1匹減ったと思い、心から喜びを感じています。奪い合うより、みんなで保護猫活動を底上げしていく方が理想ですよね。これから先、保護猫カフェ同士の横の繋がりができてくれば、どこかのお店で困難な状況が起きた時も、助け合って乗り越えていけるのではないかなと思うのです。

「たとえば、資金難で継続が厳しいところがあれば、私たちにはもう少し家賃の安い物件を探すお手伝いができることもあるかもしれません。危険な感染症が発生した時、里親詐欺が起きた時にも、情報交換ができるような仕組みがあれば心強いですよね」(小野田)

MESSAGE〜来て、知ってもらう先に描く夢

いやし亭小野田さんから、保護猫のために力になりたいと思っている人へ

小野田:それぞれの地域にある保護猫カフェに出かけて、ボランティアの募集や、必要とされていることなどを見つけてみてください。ここは、場所柄サラリーマンの方が多いのですが、保護猫カフェって何? という人がまだまだ少なくありません。いやし亭を通じて、保護猫という存在についてたくさんの方に知ってほしいと思います。あちこちで知る方が増えることで、いつか法律が改正され、動物にやさしい社会が実現できたらいいですね。

DATA

いやし亭 ほご猫茶屋|新橋
https://iyashitei-hogonekochaya.com/
営業 平日・土曜14:00〜20:00、日曜・祝日12:00〜18:00
利用料 10分200円、1時間980円〜
アクセス 新橋駅 日比谷口(SL広場方面)徒歩5分

caTravan diary|編集後記

小野田さんの第一印象は、穏やかな優しい女性。お話を聞くうちに、実は好奇心に富んだ冒険家だということが徐々に解明されていきました。実際に20代で世界一周の舟旅を経験されているとのこと。人生で初めて瀕死の仔猫を保護したのが2017年6月。その5ヶ月後に保護猫カフェの代表を任され、さらに5ヶ月で開店にこぎつけた力の源がその辺りにあるのかもしれません。「攻めの保護猫カフェとしてやっていきたい」という小野田さんの今後の発信に、キャラバンも注目し、シェアしていきたいと思います。(Mya~no)

保護猫活動は、まだ長くない、という小野田さん。しかしお話を聞くと、とても密度の濃い保護猫活動している方。ご自身でミルクの子を保護し育てたり、ご自宅にもたくさんの保護猫たちがいたり。その中には救えなかった小さな命もあるそうです。不幸な子を増やさないように、小さな命を繋いでいくために、保護猫活動家同士の横の繋がりを持っていきたい、と言う小野田さんに、共感の心を持たずにはいられません。穏やかな印象、しかしその中に秘めてあるしっかりとした大きな柱が、いやし亭を支えてるのだと思いました。(Tomom!)

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