2017年夏。高円寺で保護猫カフェが1つ閉店しようとしていました。その閉店からわずか15日。後継となる「里親募集型猫カフェ猫縁(以下、ねこえん)」がオープンします。「やっとここまで人に慣れた子たちを多頭に戻せない」。2年の前身保護猫カフェでの経験を土台に、がんばってきた猫たちへの愛情を原動力に、進んできた。再出発から約一年を経た「ねこえん」オーナー浅利さんにお話をうかがいました。
責任をもてる数、定員15

ー連休明けの取材日。あいにくのお天気の中、お客さんがひっきりなしに扉を叩く「ねこえん」。オーナーの浅利さんは前身「猫の家」のスタッフとして携わる中、その閉店を引き継ぐ形で現在の店舗をオープンさせました。
浅利:こだわったのは猫の数です。私が責任をもって飼育できるのは15匹。それ以上になると、争いや粗相をする子など猫のストレスが増え始めます。だから前身の保護猫カフェから引き継いだ子たちと、山梨のNPO法人リトルキャッツさん http://littlecats.jp/ から預かる猫たちとで定員15匹。卒業する子が出るごとに新しく保護猫を預かる、という方針で運営を続けてきました。
ゆずらぬ、365日トイレ丸洗い
ー自分のキャパシティと猫たちのキャパシティ、経験をもとによく理解しているからこそいきついた猫の数。そのせいか、ねこえんでは、保護猫施設特有の臭いなどはほとんど気にならない。約一年、継続する日々の中で大切にしてきたこだわりは?
浅利:お掃除です。トイレは毎日丸洗いしています。お店で多頭の臭いは本当にダメだと思っているので、それだけは相当こだわっているんです。営業日は、開店前の2時間のお掃除が勝負。実際これを続けていると、臭いをかなり抑えることができ、粗相をする子も減って、ひいては猫たちの健康維持にもつながっています。

心の余裕。そして、どうしてもこの子!という熱量

ーホームページ上で「譲渡条件」について非公開としているねこえんさん。大切に育てた子たちをどんな方に迎えてもらいたいか。そこには、明文化しにくい譲渡事情がみえてきます。
浅利:一言で言うと……“余裕”です。経済的な余裕ではありません。“心の余裕”です。なかなか言葉にしにくいですが、たとえば会話の中で、ああ、これでは譲渡するには不安だなと思うようなキーワードはいくつかあります。それにやはり、どうしてもこの子を! という熱量の大きな方に託したい。この子たちはいくら人慣れしているとはいえ、家猫としては0からのスタートです。譲渡後にお家で想定外の問題が起きたとして、受け止めてもらえるかはその方の想いによりますから。


めばえた、ねこえん里親の輪

ーこうして2017年7月のオープン以来、里子に出た子は約20匹を数えます。慎重に、覚悟を重ねながら譲渡を行なってきた中で、ある変化が芽生えているそうです。
浅利:里親さんの中で、自然とうれしいコミュニケーションが生まれました。ねこえんでは、スタッフと里親さんたち、みんなでつながっているLINEグループがあります。誰かが何か困りごとを投稿すると、自分たちの経験から親切にアドバイスを寄せてくれるんです。私はカフェでの猫たちを熟知していますが、家猫になったみんなの繊細な様子や変化はわからない。ですから、こうして里親さん同士が助け合ってくださるのには、本当に感謝しています。

小さなゴールを1つ1つ積み上げて

ー“今一番の課題は?” という質問には、浅利さんらしい答えが返ってきました。
浅利:今抱えている課題というのは……ありません(笑)。運営引き継ぎから1年。1つ1つ課題に向き合いクリアしてきました。提供サービスの内容、お掃除のやり方、譲渡条件。日々顔を出す課題に対処して、小さな達成を積み上げながら、これからも続けていくのだと思います。

Message〜遊びってたのしい。おひざって、あったかいね
ねこえん浅利さんから、保護猫のために力になりたいという人へ

浅利:やはり、遊びに来てもらうことが支援になります。なぜなら毎日、私たちは掃除と運営で手一杯ですが、猫たちに、“遊びって楽しいんだ。人のおひざって、こんなにあったかくて気持ちいいんだ”と教えてくれるのはお客さんだからです。こうして、お客さん、スタッフ、みんなと一緒に育てた猫たちを、1匹ずつ、大切に里親さんへ届けていくこと。それが私の人生の目標です。

DATA
里親募集型猫カフェ猫縁(ねこえん)|高円寺
https://necoen.amebaownd.com/
営業 14:00〜20:00(最終入店19:00) ※火曜定休
利用料 1時間1,100円〜
アクセス 高円寺駅 北口徒歩5分

caTravan diary|編集後記
取材中、多くの猫たちがお客さんの膝に乗ったり、寄り添ったりしてとっても人慣れしている様子。浅利さんによれば、そこには猫と人の“波長”があるそうです。お話の端々で、卒業後のお家で、猫と人が暮らす幸福を見据えて譲渡の判断をする浅利さんの“覚悟”を感じました。もう1つ。主食に一般的なフードをあげているとのことですが、在籍している猫たちはスリム&フィットで風貌もみな健康的でした。それもまた、浅利さんのトイレ掃除と健康へのこだわりのお話とリンクしているのかな、と印象に残りました。(Mya-no)

初めてねこえんさんに訪問したとき、どの猫たちもとても慣れていて、驚きました。
浅利さんをはじめとするスタッフさんがお世話や運営をして、お客さんが猫たちを慣らしてくれる。そんな仕組みが根付いていて、なるほど、とストンと落ちました。初めてお店に行った方でも、そんなねこえんイズムを感じることができると思います。
パワフルで素敵な笑顔の浅利さん。自分と向き合い、猫たちと向き合う。無理をしない、けど妥協はしない。そんなこだわりを、シェアしてもらいました。(Tomom!)

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